2014年9月15日

 大学生活最後の夏休みも、結局何者でも無いまま終わった。長期休暇という気分では全然無くて、まあいつもそうなんだけど、最初からこれ(アルバイトに行くか友人と会うか)以外の過ごし方なんて無かったのだ、という錯覚を覚えるほどだった。あるいは日曜日を何度も反復しているような気分。とにかくいつにも増して現在以外の時間に対する意識が取り払われた不思議な二ヶ月間だった。
 この間「けものがれ、俺らの猿と」の映画を観てから本を読んだ。映画は何度も主人公が目覚めるように夢みたいな脈絡の無さがあったんだけど、小説のほうはちゃんと繋がっているのに気づいたらまったく違う場所に連れて行かれていって迷子になったようだった。DVDになっている映画を観たあとにアマゾンのカスタマーレビューを閲覧するという人は多いと思うがわたしもそうで、かるーく流し読みしていたら「不条理」という文字が散見された。この小説は結果として不条理になっているだけで、現実の過剰な状態とか過剰にデフォルメされた現実を描いているんじゃないかなと思った。より端的に言えば「実録・外道の条件」の絵本ヴァージョン。それにしても「婆の駒」という言葉はかなり良い。久しぶりに良い言葉に出会って嬉しい。アルバイト中チケットを売っているとき、喫茶店でパフェを食べているとき、赤提灯で冷奴を肴に日本酒を飲んでいるとき、心にふと「婆の駒」という言葉が浮かび思わず口ずさんでしまう。
 とりあえず町田康の本は犬のエッセイとか以外読んだので、バネの反動みたいな感じでグッと、社会に参加しまくりたい。